
今回は建林ほか(2008)が執筆動機や構成の多くを同じくするレイプハルト(1999)について。
建林ほか(2008)では、各制度内・間の因果メカニズムの解明が主目的であったが、本書では各制度の国際比較に比重がある。民主主義体制をとる国の中で日本がどのような位置にあるのか、異なる制度配置がアウトプット・アウトカムにどう帰結するのか、といった点を理解するのに適した著作である。
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レイプハルト『民主主義対民主主義―多数決型とコンセンサス型の36カ国比較研究』について。
目次
第1章 はじめに
2章 民主主義体制のウエストミンスターモデル
3章 民主主義体制のコンセンサスモデル
4章 36の民主主義体制
5章 政党制:二党制と多党制
6章 内閣の類型:執行権の集中と共有
7章 執行府・議会関係:優越と均衡の諸携帯
8章 選挙制度:比例代表制と単純多数制・絶対多数制
9章 利益媒介システム:多元主義とコーポラティズム
10章 権力分割:連邦制と分権
11章 議会:立法権の集中と分割
12章 憲法:改正過程と違憲審査
13章 中央銀行の独立性
14章 民主主義体制の2次元概念図
15章 マクロ経済運営と社会的暴力の抑制
16章 民主主義の質と「より寛容な」民主主義
17章 結論と提言
本書は、(政治制度から見た)民主主義の多様性とその政策的帰結を36カ国の比較研究から明らかにしている。
筆者はまず、民主主義を「多数決型民主主義」(「多数派による」統治)と「コンセンサス型民主主義」(「できるだけ多くの人民による」統治)として特徴付ける。各国の民主主義がどちらに色付けられるかは各政治制度の性格による。ここで対象となる制度とは、「政府・政党次元」に属する制度(4~8章)と「連邦制次元」に属する制度(10~13章)であり、各章では、これら制度の「コンセンサス型民主主義の程度」を図るため指標を工夫し測定、最終的に各国ごとに両次元の平均をとり、二次元空間にプロットする(14章)。
例:多数決型→イギリス、ニュージーランド、バルバドス
コンセンサス型→スイス、ベルギー、EU
14章までの分類と数値化に基づき、15・16章では各民主主義体制の政治的帰結を分析する。つまり、
「コンセンサス型の程度→マクロ経済運営・社会的暴力の抑制」(15章)
「 〃 →民主主義の質」(16章)
の相関を統計的に測定している。
筆者は、マクロ経済運営と社会的暴力の抑制のいくつかのパフォーマンスに関し、コンセンサス型が優れるが、全体として多数決型に優越するとまでは言えないとし(15章)、民主主義の質に関しては、コンセンサス型がより「民主的」で「寛容」であると結論付ける。
政策的な帰結からコンセンサス型民主主義の優越を主張するまでには至らないが、従来の「民主主義=多数決型」「多数決型民主主義のアウトカムにおける優越」という政治学における定説を覆すには十分な分析結果であるとしている。
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本書の特色は二点ある。
一つ目は、各政治制度を分類するための指標が学べる点である。
例えば、選挙制度が比例的(コンセンサス型の要素)であるか否かを測定するために7つの基準、すなわち①議席決定方式、②選挙区定数、③阻止条項、④議員定数、⑤大統領選挙の存在、⑥一票の格差、⑦名簿協定の存在を挙げている。そして、各点を測定する指標を先行研究を参照して慎重に選択する。こうした作業を全ての制度に関して行っている。
代表的な指標の特徴と問題点を概観するための適当な教科書となる。
二つ目は、各国の政治制度を少しずつ学べる点である。
マルタが単記移譲投票制なのに二大政党制に近いとか、バルバドスがウエストミンスター型の最たる例だとかそりゃ知らないわけで、単純に知るのは面白い。また、対象国全体の傾向として、強い違憲審査制を持つ国が極少数であることや、執政府と選挙制度からできる4つのパターンが四半球と地理的対応にあることなどが指摘されていることも目新しかった。
この他にも、制度間の相関(例えば、連邦制・分権指数と中央銀行の独立性、人口規模の相関)や、制度配置の帰結(例えば、民主的統治の質と効果はトレードオフではない)が直感的な予測に反している例が挙がっており、実証研究の醍醐味を感じられる点も面白い。
データの取り方(国・地域、時間のズレ)や指標の設定に関し、問題点は指摘されるだろうが、網羅的で分かりやすく教科書的な面と、実証研究の面が上手く組み合わさった名著だと思う。
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今後は、各制度のより詳細な比較研究を見てみようと思う。司法制度とか中央銀行とかあんまり研究が進んでいないとこが面白いかな。
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