
R.Axelrod『つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで』ミネルヴァ書房、1998年
「人間はどう行動するか:協調と裏切り―シミュレーション」というテーマで、ゼミで扱った文献。
前回のHirshcmanに引き続き、経済学のアプローチ(ここではゲーム理論)から人間行動を分析する枠組みを検討する。以下、レビュー。
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目次
第1章 協調関係の諸問題
2章 「しっぺ返し」の成功―コンピューター選手権において―
3章 協調への道筋
4章 殺しも殺されもしない戦争―第一次世界大戦の塹壕戦において―
5章 生物における協調関係の進化
6章 効果的な選択とは
7章 協調関係を育てるために
8章 協調関係と社会構造
9章 互恵主義のたくましさ
本書の目的は、
「利己的にふるまうエゴイストが自発的に協調することはあるのか?あるとすればその条件は何か?」
を明らかにすることである。そのために、ゲーム理論、特に「くり返し囚人のジレンマゲーム」の枠組みを用いる。
本書では、筆者が行ったコンピュータ選手権の結果をスタートとしている。
この選手権は「くり返し囚人のジレンマ」ゲームをコンピュータプログラム間の競争として再現し、そこで高得点をとる戦略(プログラム)の条件を探るためのものである。そこでの結果は、行った2回ともに「しっぺ返し」戦略の勝利であった(「しっぺ返し」戦略とは、決して自分から裏切ることなく、相手が前回とった選択をやり返す戦略を指す)。そこから導かれる条件として「上品さ(自分から裏切らない)」「心の広さ(裏切ったあとでも再び協調する)」「即座の報復(裏切られたら裏切る)」「分かりやすさ(相手からみて戦略の規則性が分かる)」が挙げられた。また、得点に応じてその戦略をとるプレイヤーが増えていくという生態学的解析の実験にかけると、「しっぺ返し」が支配的になる様子も確認された。
このように「くり返し囚人のジレンマ」状況下でも協調関係は築かれうる。
このことを筆者は第一次世界大戦の英仏対独の塹壕戦において実証している。つまり、敵対的な関係にある両軍の間にある種の協調関係が生まれたのだ。そこでの協調関係とは「殺しも殺されもしない」関係、具体的には、相手に致命的なダメージを与えないような砲撃をしたり、やられても過剰な反撃にでないことを指す。この例から、互恵主義に基づく協調関係が生まれるためには、友好関係は必要がないことが明らかとなった。
以上の分析から、協調関係を築くためにゲームのプレイヤーと調停者が何をすべきかを提示している。
プレイヤーへのアドバイスとは、
①目先の相手を羨まないこと
②自分の方から先に裏切らないこと
③協調であれ裏切りであれ、そのとおりに相手にお返しすること
④策に溺れないこと
調停者へのアドバイスとは、
①将来の重みを増やすこと(普通将来の価値は割り引かれる)
②利得自体を変更すること
③プレイヤーに他人の幸せを気にかけるよう諭すこと
④互恵主義を教えること
⑤相手を正確に識別すること(相手の過去の行動を記憶する)
である。これらが達成されるとき、協調関係は生まれやすくなる。
筆者はこの理論を、バクテリアや癌細胞、鳥といった生物界の事象から、ビジネスや議会での議員行動、国際関係における国家間の行動にまで応用し説明している。
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本書の功績は「様々な状況にゲーム理論を適用でき、ゲームのくり返しが協調を導く」という枠組みを示した点にある。
ゲームの現実性を考慮すると、精神的な利得はどう考えられるのか、他人からの評価を気にする側面もあるのではないか、また、汎用性があるといってもなぜそれが当てはまるのか体系的に説明できないのではないか、ルール次第で「しっぺ返し」が優勢になるとは限らない、より高得点をとる戦略(「パブロフ」など)があるのではないか、といった批判が多々出る。
しかし、それら要素を考慮しだすと複雑に過ぎ、一般性を保った理論として存立しえない。プレイヤーの合理性仮定や利得の単純化をもって、「すっきりした」論理を組み汎用性を高めている、その点に価値がある。あとは、分析対象の状況に応じてどう修正を加えるか、そこからは研究者各々の課題である。
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2週間前、詐欺にあった。
路上で「財布なくして電車賃ないから貸してくれ」ってあれ。どう考えても言ってることおかしいし、交番か駅でお金借りてもらえばいいとその場で思ったけど、結局、あげた。
もし万が一本当に帰れない状況とか、詐欺しなくちゃいけないような経済的困窮状態とかにあるかもしれないとか思うと、それを無視するのは自分の(精神的)利得に反するし、それに比べてあげるお金の(相対)利得は低いから自分としてはあげた方がよかった。利己的に。
この本の理論が正しければ、この詐欺師のおばちゃんに出し抜かれても問題はない。自分としては協調を続けて自分から裏切らなければいいし、もし搾取するような相手ならちゃんと報復すればいい。日々いろいろな人と接してコミュニケーションをとる状況では、総合的に大きな利得を得られればいいのだ(なんかちょっと違うかも笑)。
と言って、信頼を裏切られた気持ちを落ち着かせる根拠に使いました泣。
(H・ω・M)
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