2010/06/22

比較政治学入門①












比較政治学の教科書を2冊紹介。

①建林正彦ほか『比較政治制度論』有斐閣、2008年
②A.Lijphart.1999”Patterns of Democracies"(邦訳『民主主義対民主主義』)Yale University



まず、建林ほか『比較政治制度論』について。

目次
第1章 比較政治学とは何か
 2章 制度論
 3章 選挙制度
 4章 執政制度
 5章 政党制度
 6章 議会制度
 7章 官僚制
 8章 司法制度
 9章 中央銀行制度
 10章 中央・地方関係制度

本書は、その「あとがき」にもあるように、レイプハルト(1999)を明確に意識して書かれている。
その特徴は、後者が「多国間比較に重点を置くあまり、因果メカニズムが曖昧」であることに鑑み、アプローチは合理的選択論、対象は日本の政治制度に限定することで、各制度を分析する際の枠組みを詳述している点である。加えて、本書冒頭で比較政治学、ひいては社会科学の方法論的基礎について論ずることで政治科学の教科書の役割を果たしている点、また、複雑で論者により用法が異なる新制度論アプローチを分かりやすくまとめている点も評価できる。

本書の構成は、1・2章で理論的基礎の紹介をした後、3章以下で各制度に係る因果仮説を提示、先行研究を引いて仮説を検証するというスタイルをとっている。
3章以下は、3~6章の「政治家に関する政治制度」と7~10章の「政治家の代理人に関する政治制度」とに分かれる。つまり、国民と政治家の関係、政治家と代理人の関係、そして、それらにルールを与える各制度間の関係を分析対象としている。

このような構成をとることで、本書には二つの利点が生まれる。

一つ目は、理論に基づき考え、仮説を実証するスタイルが追体験出来る点。
これは社会科学の方法論的基礎として当然であるが、自分のような政治科学の初学者には難しい作業である。仮説を立てるにもどの変数間の関係を調べればいいのか、現実の政治事象をどのように操作化すればいいのか、何をすれば実証したことになるのか、どの先行研究を参照すればいいのか、等々、因果関係の特定にはいくつもの乗り越えるべきステップが存在する。そうした社会科学の考え方を学べるサンプルを提供してくれる。

二つ目は、政治制度の「地図」を把握できる点。
本書は政治制度を「本人がいかにして代理人を選び、いかなる権力を委譲するのかを定める仕組み」と定義する。数ある政治制度を、本人・代理人関係の中に位置づけて各制度間の関係を明確化する。同時に、各制度内の変数間も合わせて紹介することで、ミクロ・マクロレベルで政治制度間の因果メカニズムを把握できる。

政治学は、その体系性のなさや対象領域の曖昧さが批判の対象となるが、分析手法と対象に関して一定の合意がある範囲も少なからず存在する。本書は、合理的選択論と公式の制度に限定することで、そうした共通
領域を示している。ここから非公式の制度や歴史、思想の分析に入ることは有益だと感じる。



以上、建林ほか(2008)について。レイプハルト(1999)に続く。

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